2016年5月19日:「金のとりから」「黄金のとりから」“唐揚げ紛争”和解成立(2)

知財関連のニュースを中小企業の経営者や知財担当者に向けて、
中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本英彦が、
ポイントを絞ってわかりやすく解説します。

「金のとりから」「黄金のとりから」“唐揚げ紛争”和解成立(SankeiBiz)
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/160519/cpb1605191904001-n1.htm

株式会社シマナカ(大阪)が、
ピーコックフーズ株式会社(愛媛)商標権侵害で提訴していた事件で、
商標を使用しないこと、および相当額の解決金を支払うことを条件に和解となったようです。

この記事を以下の2つのポイントから解説します。
(1)商標権侵害
(2)商標法と不正競争防止法

(1)については、先の記事で解説してありますので、そちらをご参照ください。

(2)商標法と不正競争防止法について
商標(名称やマーク)を保護する法律としては、商標法の他に、
不正競争防止法が(商標使用の保護規定が一部に)あります。
商標法では、商標登録を受けた商標が保護されますが、
不正競争防止法では、使用されて有名(周知)になった商標が保護されます。

不正競争防止法では、簡単にいうと
ある人の使用によってある商標が周知になった場合、
その商標と同一または類似するような商標を他人が使用することを禁止しています。

不正競争防止法では、複雑(法的)にいうと
他人の商品等表示として需要者の間で広く認識されているものと同一・類似の商品等表示を使用し、
他人の商品または営業と混同を生じさせる行為を禁止しています。
(商品等表示に商標が含まれるので、今回の解説では、商品等表示=商標として説明します。)

不正競争防止法では、商標法での商標の登録は関係ありません
平たく言うと、商標登録されていなくても、周知の商標を保護します

今回の事件では、シマナカは商標権を持っていたので、
ピーコックフーズに商標の使用を中止させ、和解金をもらえることになりましたが、
商標権をもっていなかったらどうなっていたのでしょうか?

このとき、不正競争防止法が使えるかもしれません。
すなわち、シマナカは「金のとりから」という名称の「からあげ」を使用して周知にしており、
その後、ピーコックフーズは、(おそらく)シマナカの「金のとりから」を模倣して
黄金のとりから」という名称の「からあげ」を使用しているので、
不正競争防止法違反になるということです。
これにより、シマナカは、ピーコックフーズに対して、使用の中止や損害賠償を請求できます

なお、商標法では(「(1)商標権侵害について」を参照)、
商標権者の登録商標と、侵害被疑者の使用商標を比べていましたが、
不正競争防止法では、周知になった商標と、侵害被疑者の使用商標を比べるわけです。

それなら、商標権なんかとらなくても、不正競争防止法があればいいのでは?
と思われるかもしれませんが、商標の周知性の立証はかなり大変です。
たとえば、周知性の証明に、商標の使用開始時期、期間、地域、生産の証明、譲渡の数量、
営業の規模、広告宣伝の方法や回数などなどが必要になります。

これに対して、商標権侵害で訴えるのであれば、
商標の周知性を証明しなくてもよいので、
特許庁から登録原簿を取り寄せて証拠にするだけですみます。
商標登録の費用は、それほど高価ではないので(自分でやれば12,000円~)、
商売を始めるとき、または、商売が大きくなり始めたときは、
商標登録をしておくことをお勧めします

ちなみに、今回にニュースについて話すときには、
不正競争防止法でも一部に商標保護の規定があるけど、 訴えるなら商標侵害の方が断然楽だよね
というと、商標をわかってる感じがでると思います。