今さらひとに聞けない【拒絶理由通知】の意味

【拒絶理由通知】と聞くと、なにか悪い通知のようで、あまり受け取りたくない印象ですが、知財の業界では【審査官からのラブレター】とも呼ばれ、特に敬遠する必要はありません。

【拒絶理由通知】について弁理士の山本英彦がわかりやすく解説します。

(正確ではない部分もありますが、わかりやすさを重視して説明します。)

特許出願が【拒絶査定】になるまでに1度は必ず【拒絶理由通知】が来る

特許が審査されて最終的にされる処分を【査定】といいます。特許の審査では、登録される【特許査定】と、登録されない【拒絶査定】のいずれかの処分が審査官によってなされます。

特許申請(出願)をする側であれば、【特許査定】ばかりもらえることが望ましいのですが、世の中に特許が増えすぎると特許権者以外が作れない製品が増え、特許出願しない人が不利になってしまいます。(お金持ちがたくさん出願するようになって、貧富の差が広がることになります。)

したがって、特許庁では審査に合格したものだけを特許として登録【特許査定】し、審査に落ちたものを【拒絶査定】にします。ただし、いきなり【拒絶査定】が来ると、特許出願した人は、高いお金を払って、特許出願と審査請求をしたのに何も得られません。

それでは納得がいかないだろうと考え、特許庁は【拒絶査定】を通知する前に【拒絶理由通知】を出すように義務付けられています。よって特許出願が【拒絶査定】になるまでに1度は必ず【拒絶理由通知】が来ることになります。

【拒絶理由通知】に対応して【意見書】や【手続き補正書】を提出

【拒絶理由通知】を受けた特許出願人は、拒絶理由に対して意見すること(【意見書】の提出)が許されており、審査官に意見が認められれば、【特許査定】がもらえることになります。また、この意見の間は【補正】の手続き(【手続補正書】の提出)が許されており、【拒絶理由】に対して、特許出願の内容(主に【特許請求の範囲】)を【補正】することで【拒絶理由】が解消して【特許査定】がもらえることもあります。

特許出願の8割くらいは、【拒絶理由通知】の対象になっているそうです。これは、特許出願をするときに、できるだけ広い権利(いろいろなバリエーションの製品)で特許を取れるように出願の内容が書かれているからです。

その広い権利のままでは、すでに開発されて公知(みんなが知っているまたは使っている)技術(先行技術文献)と違いがないという場合に、【拒絶理由通知】が来ます。これを【新規性】違反または【進歩性】違反の拒絶理由と呼ばれます(他にも【拒絶理由】はあります)。なお、【拒絶理由通知】には【拒絶理由】の内容(審査官がなぜ拒絶しようとするのか)が詳細に説明されています。

そこで、広い権利範囲を少し狭くして(製品のバリエーションを減らして)、先行技術とは違うものだけを残すように【補正】の手続きをします。【補正】によって、先行技術との違いが明確になったら、【特許査定】になります。

【拒絶理由通知】は優良な特許を取得するチャンス

最初から権利範囲を狭くして特許出願すれば、【拒絶理由通知】が来ることなく【特許査定】になる可能性が高まります。しかし、権利範囲を狭くし過ぎると、簡単に類似品をつくれることになってしまいます。また、どこまで権利範囲を狭くすれば【特許査定】になるのか、出願の時にはわかりません。

よって、特許出願の時には広い権利範囲で出願しておりて、【拒絶理由通知】をもらって、権利範囲をどのくらい狭くしたら特許になるのかを判断して【意見】と【補正】で対応します。【拒絶理由通知】は【拒絶理由】が詳細に書かれているので、判断基準を教えてくれるわけです。

したがって、【拒絶理由通知】にある先行技術文献の内容を交わすように、上手く【補正】ができれば、権利範囲が広い優良な特許を取得することができます。(ただし、なんでもかんでも【補正】できるわけではないので【補正】の内容には注意が必要です。)

今日のポイント

【拒絶理由通知】は優良な特許を取得するチャンスなので、【拒絶理由通知】が来てもガッカリせずに、適切な対応(【意見】や【補正】)をしましょう。

特許、商標などの知的財産の情報を提供してます。
知的財産に関することをわかりやすく伝える特許事務所です。
☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟☟

事務所バナー

この記事を書いた人

山本 英彦