特許戦略を考える(2)

特許出願の立案というと大層な感じがしますが、特許を使って利益を上げる方法を考えるだけです。

営業さんが取引条件を少しでも有利にできるように考えたり、
経理の人が少しでも節税になる方法を考えるのと同じだと思っています。
要は、特許をどうやって会社の利益に結びつけるかを考えるのが特許戦略だと認識しています。

特許戦略の一例

他社に同じような新製品を先行販売ときに、その特許で他社が製品を改良するのを抑止し
自社の新製品で独占市場を形成する

このような事例が考えれます。
自社で新製品として装置Xの開発が進んでいた。
装置Xは、a方式b方式が考えられましたが、a方式とb方式の両方を試験した結果、
a方式の方が優れていることがわかり、a方式が採用され、開発を進めることになった。
もちろん、a方式の装置Xで特許申請も行った。

その後、開発に苦労した部分もりましたが、開発者さんの頑張りで、なんとか新製品の試作品が出来上がった。
しかし、それとほぼ同時に、競合メーカからb方式の装置X´近々販売されるという情報が入ったた。
(装置Xと装置X´は、機能はほぼ同じで、ターゲットとする顧客も同じで、同一市場の製品でした。)
自社では、まだ試作品ができた段階で、販売までにはもう少し時間がかかった。
よって、どう頑張っても競合メーカの販売の方が先になりそうでした。

同一市場の新製品は、当然、先に販売した方が市場を獲得しやすく、追従する方が不利になります。
競合メーカの装置X´はb方式なので、a方式の自社製品の装置Xの方が優れていることはわかっているのですが、
先に市場を獲得されると、製品の性能だけではひっくり返せない場合もあります。

事業戦略の再検討

対策会議が開かれ、装置Xの事業戦略の再検討がされた。
その中で、競合メーカの装置X´の弱点も見つかり、おそらく装置X´は改良されるとの予想が立った。
ただし、その弱点は、装置として決定的な弱点と呼べるほどのものではなく
装置X´を納入してから、追加的に改良することもできるものだったので、
競合メーカの販売が遅れることは期待できなかった。

しかし、その弱点の改良が予想されるのであれば、その改良で特許を取得することも可能と考えられた。
少なくとも、出願をしておけば、相手が改良に着手するときの心理的障壁になる。

幸い、装置Xのb方式に関して、a方式と比較の際に検討されていたので、
特許申請をするための情報も十分にあった。
対策会議の日から出願の準備をして、土日出勤もしながら、翌週の月曜日には出願を終えた。
また、競合メーカにプレッシャーを与えるべく、出願の内容を公開技報にも掲載した。

その直後、競合は予定通り装置X´の販売を始めましたが、急激に新製品が普及することはありませんでした
(弱点が原因だったのかはわかりません。)
一方、数か月遅れて自社の装置Xが販売になりましたが。こちらの方は、かなり順調に売り上げを伸ばしていった
そして、自社製品の装置X販売後も、競合メーカが、装置X´を改良することはなかった

最終的に、装置Xは、高利益商品として、現在も販売が続いています

大手企業に負けない特許戦略を一緒に考える特許事務所です。
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この記事を書いた人

山本 英彦