「特許侵害(特許権侵害)」という言葉を耳にすることはありますが、なんか難しいそうなイメージで、実はよくわかっていないってことありませんか?
【特許侵害】について弁理士の山本英彦がわかりやすく解説します。
(正確ではない部分もありますが、わかりやすさを重視して説明します。)
【特許侵害】の簡単な例
特許の資料には【特許請求の範囲】というものがあり、以下のように書かれています。
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【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
a部材を備える、装置X。
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この特許は、「装置X」の発明で、装置Xはa部材を持っていることが特許の特徴ということがわかります。この「特許の特徴」を「構成」と呼んだりします。「装置Xはa部材を構成に持つ」といった具合に使います。
特許権者以外の者が、【特許請求の範囲】に記載されている「部材aを備える装置X」を製造したり販売したりすると、特許を実施したことになり、【特許侵害】になります。
【特許侵害】のもう少し具体的な例
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【書類名】特許請求の範囲
【請求項1】
長針(a1)と、
短針(a2)と、
白い文字盤(a3)とを備える、時計(A)
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この特許を図解すると、以下のイメージになります。(この内容で出願しても登録されることはありませんが、登録されて特許になっていることにしてください。)
この特許に対して、次のような製品が販売された場合はどうでしょうか?
長針(a1)と、短針(a2)と、白い文字盤(a3)と、秒針(b)を備える時計(A1)
これは、【特許侵害】になります。
時計(A1)は、特許(A)の特徴である長針(a1)、短針(a2)、白い文字盤(a3)の全てを備えているので、特許を実施したことになり、【特許侵害】になります。
時計(A1)は、特許の特徴に加えて、余分に秒針(b)が含まれていますが、余分なものが含まれていても、関係ありません。特許の特徴が全て含まれていれば、その他は関係なく【特許侵害】になります。
では、次のような製品が販売された場合はどうでしょうか?
長針(a1)と、短針(a2)と、青い文字盤(a3´)とを備える時計(A2)
これは、特許侵害になりません。
時計(A2)の文字盤は、白い文字盤(a3)に代えて青い文字盤(a3´)になっています。したがって、時計(A2)は、特許(A)の特徴である白い文字盤(a3)を備えていないので、特許を実施したことにならず、【特許侵害】になりません。
このように、特許の特徴が1つでも欠けていると【特許侵害】になりません。「特許を回避される」と耳にしたことがあるかもしれませんが、それは、いくつか特許の特徴を真似しながら、1つ以上の特許の特徴を真似しないで製品を作った状態をいいます。
結構簡単だと思いませんか?【特許侵害】の意味は簡単なんです。
ただ、【特許請求の範囲】の記載が複雑な場合が多く、また、【特許請求の範囲】と製品の対比が難しい場合が多いので【特許侵害】が難しいイメージになっているのだと思います。
【特許請求の範囲】の記載が複雑になる理由や、【特許請求の範囲】と製品の対比が難しい理由は、別の機会に説明したいと思います。