特許法2条1項は発明について定義しており、
発明の定義とビジネスモデル特許は大きく関係します。
特許を活用して中小企業の利益を守る、中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本です。
特許法第2条第1項
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。
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弁理士試験のお勉強では、以下のように習います。
・発明であるためには一定の確実性が求められるが、一定の確実性をもって同一結果を反復できれば良く、その可能性が高いことを要しない。
・ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合、当該ソフトウェアは自然法則を利用した技術的思想の創作である。
・電報用の暗号作成方法などは人的な単なる取り決めで、自然法則を利用していないので、発明ではないと解する。
・「高度のもの」とあるが、技術水準の低い部分は包含しないという趣旨である。
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この定義から、発明とは、技術的な創作(アイディア)でなければなりません。
単純にビジネスモデルを特許出願すると、発明に該当しないとして拒絶されます。
(ただし、拒絶理由は特許法2条ではなく、29条1項の柱書違反です。)
技術的思想の創作ではないからです。
例えば、地域ごとに配る広告を変えるというビジネスモデルを考えたとします。
具体的には、お客の住所を特定して(例えば大阪吹田市)、
特定した地域(お客さまの住所)に対応する広告などの情報(大阪吹田市にあるお店の広告)を配る。
というビジネスモデルです。
(ビジネスモデルというには、当たりまえすぎるかもしれませんが。。。)
これをそのまま明細書(特許出願資料)に仕上げて出願(および審査請求)しても、
技術的創作ではなく、発明にならないとして拒絶されます(特許にならない)。
しかし、例えば、
「情報通信技術を用い、ユーザの端末(例えばパソコン)に割り当てられたIPアドレスから、
ユーザの地域を特定して(例えば、大阪吹田市)、
特定した地域(パソコンの所在地)と対応する広告などの情報(大阪吹田市にあるお店の広告)を、
ユーザの端末に表示する」とすると特許になる可能性があります。(特許3254422号を参考)
ビジネスモデル(広告の配布(配信方法))が、
情報通信技術を利用して実現されているため、
技術的創作として認められ、発明として成立するわけです。
(特許になるには、発明の成立の後に、新規性や進歩性を満たす必要があります。)
ビジネスモデル特許とい言葉から、ビジネスモデルがそのまま特許になるような気がしますが、
上記のようにビジネスモデルはそのままでは特許になりません。
ビジネスモデル特許という言葉が一昔前には流行りましたが、
当時から今日まで、ビジネスモデルがそのまま特許にならないことは変わっていません。
ちなみに、ビジネスモデル特許という言葉も特許法の条文にでてきません。
しかし、ビジネスモデルそのものが特許にならない場合でも、
新しいビジネスモデルには、新しい発明が潜んでいることが多くあります。
インターネット技術のような情報通信技術であったり、
ビジネスモデルに利用する物であったり、
ビジネスモデルで販売する製品(サービス)であったり、
発明は、視点によって、色々な考え方(発明の特定)ができます。
重要なのは、ビジネスモデル特許を取ることではなく、
ビジネスモデルを他人に真似されないように(ビジネスを守れるように)、
特許が取れる形に発明を特定することです。
発明は、技術的思想の創作で高度なものと定義されていますが(特許法2条1項)、
定義に当てはまる形で発明を特定し、ビジネスに生かせる特許を取得することが重要と考えます。