私の経験した特許侵害訴訟(準備書面の作り方)

中小企業の知財にいたときは、特許侵害訴訟も経験しました。

訴訟は、書面のやり取りで進行していきます。
最初は、訴状答弁書から始まり、その後の書面は準備書面になります。

裁判官は、書面の内容から技術内容を理解し、
特許を侵害してるか否かの判決をするので、いわずもがな、これら書類の作成は最重要になります。
(以下では、準備書面について書きます。)

私の経験した特許侵害訴訟では、
弁護士さんが主になって準備書面を作成しました。

準備書面の提出が期日に遅れる問題(私の経験した特許侵害訴訟(書面提出期日)参照)などの問題はありましたが、
基本的には優秀な弁護士さんだったので、
最終的に仕上がる準備書面は、いつも唸らせられるほど素晴らしいできでした。
裁判に関係していた社内の技術者が読んでも、説得力があるといっていたので、
本当によくできた文章(書類)だったと思います。

そんな準備書面ですが、作成手順は次のようでした。
①打ち合わせで方向性を決める
②下書を弁護士さん以外に人にさせる
③下書を基に弁護士さんが自分の考えも加えてまとめる

この弁護士さんの準備書面作成の特徴は、②の下書を弁理士さんの他に私も書いていたことです。
普通は、企業側の人間は、チェックだけで、書面作成はほとんどしないのではないかと思います。

自分も下書をするようになって、面白いと思ったのは、
打ち合わせで方向性を決めるため、同じような内容になりそうなものなのに、
弁理士さんや私のつくる下書のそれぞれの内容に違いがあったことです。

確かに、特許出願時に、同じ発明でも弁理士によって出来上がる明細書は違ってきます
そう考えると、いくつかの下書きから、良い部分(説得力のある部分)を採用して
準備書面を完成させる方が、よいものができあがる気がします。

しかし、このやり方、1つ問題があります。
下書を基にしてくれるのですが、やはり、弁護士さんの考えが中心になるので
私たちの下書で採用される部分が少ないと、「せっかく書いたのに、、、」
フラストレーションがたまることです。

弁護士さんの考えは間違ってなく、確かに一番説得力があるので、
それが主になることで書面的には優れていますが、書いた方としては、、、

しかし、そんな問題にも負けずに、一生懸命、下書を書いていると、
時々採用されることがあると嬉しくなります。
また、下書とはいえ、準備書面を書いてみて、それが弁護士さんの書き方で再現されるので、
準備書面の書き方というのは勉強できました。

余談ですが、侵害訴訟の後の係争事件で、警告状や回答書のやりとりでの書面作成は、
このときの経験がとても活きました。

また、準備書面の下書をすることで、当事者意識が強くなります。
当事者なので当事者意識が強いのは当たり前かもしれませんが、
書面作成をしないと、やはり弁護士さん任せになってしまい、当事者意識が薄れるような気がします。

裁判では、何としても勝つという意思も重要ですし、
訴訟の準備書面をつくる経験はとても勉強になると思いますので、
企業側の人間もできるだけ(業務の時間が許せば)書面作成も手掛けるほうがいいと思います。

この記事を書いた人

山本 英彦