中間処理(拒絶理由通知対応)を弁理士に任せっきりにしてはいけない3つの理由

特許出願は、審査によってほとんどの場合、拒絶理由が通知され、拒絶理由に対応した後の内容で特許になるので、拒絶理由通知対応(中間処理)はとても重要です。

今回は「中間処理を弁理士に任せっきりにしてはいけない理由」について弁理士の山本が説明します。

3つの理由

1.弁理士は時間に追われている
2.弁理士は実施製品のことを知らない
3.弁理士は特許取得が仕事

※この記事では弁理士とは、特許事務所の社外弁理士をいいます。すなわち、企業内弁理士は除きます。

1.弁理士は時間に追われている。

ほとんどのビジネスマンは自分の許容量ギリギリの仕事を抱えています。そして、できるビジネスマンほど、優先順位をつけて仕事を片付けてていきます。弁理士も例外ではありません。

ここで、中間処理の優先順位ですが、トップに持ってくる弁理士は少ない(いないかもしれない)と思います。また、メインクライアントであれば、出願でも中間処理でも優先順位を上げて対応してくれるかもしれませんが、そうでない場合は、優先順位を下げられてしまうと思います。

中間処理は、それなりの経験のある弁理士であれば、短時間でそれなりの対応ができてしまいます。しかし、本当に難しい案件は、それなりの対応では特許にならないことも多いです。そんな難しい案件も時間をかけると特許を取れるアイディアが生まれることがよくあります。したがって、時間を無尽蔵にかければよいというものではありませんが、ある程度の時間を確保してもらえば、特許取得の可能性が高まります。

したがって、弁理士に任せっきりにしてしまうと、優先順位が高くない場合に、特許を取得できる案件が特許にできない(拒絶される)場合がでてきます。

2.弁理士は実施製品のことを知らない

弁理士は、出願時には発明者にインタビューして出願書類を作成することがほとんどです。しかし、出願が終わってから連絡をとることはあまりありません。出願後は、特許事務所として、優先期間や審査請求時に手続きの確認をしますが、多くの場合は事務員が連絡をするだけで、優先権出願や自発補正などがない限り、弁理士はなにもしません(下手をすると、手続きの確認をしたことも知らない場合があります)。そして、拒絶理由通知が特許庁からきた時に、やっと弁理士の出番になります。

つまり、中間処理までは、弁理士は基本的に発明者や出願人と連絡をとることがありません。そうすると、特許出願された後に販売された実施製品がどんなもになったかを知ることはほとんどありません。(特許出願より前に製品を販売すると特許取得できないので、基本的に製品の販売は特許出願の後になります。)

そうすると、弁理士は、中間処理のときでも出願時の情報にもとづいて拒絶理由に対応することになります。しかし、出願時(開発時)と拒絶理由対応時(販売後)に製品の仕様などが変わることは普通にありますので、弁理士に任せっきりにしていると、実施製品から外れた内容で中間処理をしてしまうことなる場合があります。

そんな内容で特許が取得できたとしても、有効な特許にならないので、弁理士に任せっきりにしてしまうと、有効な特許が取得できない場合があります。

3.弁理士は特許取得が仕事

弁理士は、基本的に特許を取得することが仕事です。特許が取得できたときに成功報酬(成功謝金)とうの報酬があることからも納得できると思います。

しかし、特許を取るだけなら、権利範囲を狭くすれば、ほとんどの特許出願は特許にすることができます。もちろん、弁理士は、クライアントのために少しでも広い権利範囲で特許を取得しようとしますが、上記の1.や2.の要因ともからんで、特許が取れる安全サイドで中間処理をしてしまいがちだと思います。

実施製品が守られれば権利範囲が少し狭くてもいい場合もありますが、将来どんな形で競合企業が特許製品を模倣しようとしてくるかわかりません。少しでも権利範囲が広いほうがライバルを抑止する効果が高まります。

弁理士に任せっきりにしてしまうと、権利範囲がせまくなって、競合企業の模倣を抑止できない特許になってしまう可能性があります。

中間処理は、任せっきりにしないで、弁理士を上手く使うことが重要です。その方法は、また後日書きます。

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この記事を書いた人

山本 英彦