2016年8月2日:味の素、特許侵害で韓国企業を提訴

知財関連ニュース:2016年8月2日

弁理士山本英彦が知財関連のニュースを中小企業の経営者や知財担当者に向けてわかりやすく解説します。

味の素、特許侵害で韓国企業を提訴 (日経新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ02HXV_S6A800C1TJC000/

以前、「2016年5月12日:味の素が米独で韓国企業を提訴」のニュースを解説しました。

今回のニュースは、別事件ですが、原告(味の素)と被告(シージェーチェイルジェダン(以下「CJ社」))が同一ですので、以前のニュースと今回のニュースを合わせて一連の訴訟合戦といえると思います。

また、以前のニュースの続報として「2016年6月10日:米、韓国CJを調査=味の素のアミノ酸特許侵害」のニュースもありました。

これらのニュースから、味の素の本気度がわかります。

訴訟は、国内でも相当の費用が掛かります。(「私の経験した特許侵害訴訟(費用)」を参照)

それが、海外ならなおのこと。さらに、複数の訴訟を同時に継続させるということは、いかに大手企業の味の素といえども、相当の負担だと思います。

しかし、「味の素のプレスリリース」にもあるように、「味の素は、研究開発に集中的な投資を行っており、知的財産権の侵害はこのような研究開発の努力を阻害するものと考えている。」とのことです。

もちろん、今回の訴訟はCJ社にとっても多大な負担のはずです。(基本的に特許訴訟は被告の負担のほうが大きいと思います。)なにせ、訴訟に負けると、損害賠償により、おそらく膨大な賠償が課せられ、差止により将来的な販売収入も断たれることになります。(「特許を侵害されたら【差止請求】と【損害賠償請求】」を参照)

特許訴訟に限らないことですが、訴訟というのは消耗戦にしかならないと思います。お互いに負の利益しか残さないので、特許訴訟は経営にとって悪、そして特許活動(特許の取得や活用)事態も悪、といった考えをされることもあります。

しかし、消耗戦であっても、特許訴訟に勝つことで守れる市場や技術があり、守るだけの価値が、その市場や技術にあるということです。今回のニュースになった味の素の訴訟も、味の素のコア技術で、収益の柱の分野に関するもので、本気にならざる得ない戦いだと思います。

ただ、味の素は、大企業で、多数の特許や多大な費用をかけてでも守るべき大きな市場があります。中小企業は、守るべき市場はニッチ市場ですので、多数の特許や多大な費用をかけるのではなく、負担は少なく効果の大きい方法で市場を守る工夫をしなくてはいけません。

市場を守る工夫を一緒に考える特許事務所です。
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この記事を書いた人

山本 英彦