知財関連のニュースを中小企業の経営者や知財担当者に向けて、
中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本英彦が、
ポイントを絞ってわかりやすく解説します。
「金のとりから」「黄金のとりから」“唐揚げ紛争”和解成立(SankeiBiz)
http://www.sankeibiz.jp/compliance/news/160519/cpb1605191904001-n1.htm
株式会社シマナカ(大阪)が、
ピーコックフーズ株式会社(愛媛)を商標権侵害で提訴していた事件で、
商標を使用しないこと、および相当額の解決金を支払うことを条件に和解となったようです。
この記事を以下の2つのポイントから解説します。
(1)商標権侵害
(2)商標法と不正競争防止法
(1)商標権侵害について
商標権侵害とは、簡単にいうと、
登録商標(商標権)があって、これと同一または類似する内容の商標を使用すると、
商標権を侵害したと訴えられる(かもしれない)ということです。
商標権侵害とは、複雑(法的)にいうと、
他人の登録商標と同一の商標または類似する商標を、
登録商標の指定商品・指定役務(サービス)と同一または類似の商品・役務に使用することです。
今回の事件は、シマナカが登録商標を持っていて、
ピーコックフーズがシマナカの登録商標と類似する商標を使用していたものです。
商標の登録では、登録時に
登録商標(名称やマークなど)と、指定商品・役務が決まります。
例えば、登録商標「アップル」-指定商品「パソコン」という感じです。
登録商標の同一類似とは、次の①、②の2点で決まります。
①商標(名称やマークなど)が同一または類似するか、
②商品・役務が類似するか
①、②の両方ともに同一または類似のときに、
登録商標と同一または類似の商標を使用したこと(商標権の侵害)になります。
例えば、商標登録が、登録商標「アップル」-指定商品「パソコン」のときに、
商標「アップル」(登録商標と同一)を商品「ノートパソコン」(指定商品と同一または類似)に
使用したときには、商標権侵害になります。
商標が非類似であったり、または商品・役務が非類似の場合は商標権侵害になりません。
例えば、商標登録が、商標「アップル」-指定商品「パソコン」のときに、
商標「ペア」(登録商標と非類似)を商品「パソコン」(指定商品と同一)に使用しても、
商標「アップル」(登録商標と同一)を商品「りんご」(指定商品と非類似)に使用しても
商標権侵害にはなりません。
なお、ここで注意してほしいのは、
同一または類似を比較する対象は、商標権者の登録商標と、侵害被疑者の使用商標です。
商標権者の使用商標と、侵害被疑者の使用商標を比べるわけではありません。
今回の事件の紹介でも、シマナカの商品(使用商標)と、
ピーコックフーズの商品(使用商標)の両方の写真が並んで掲載されているものが多くありますが、
商標権の問題に限れば、シマナカの商品と、ピーコックフーズの商品がいくら似ていても、
シマナカの登録商標と、ピーコックフーズの使用する商標とが似ていなければ、
商標権侵害ではありません。
今回の事件では、和解条件(使用中止と和解金の支払い)から、
ピーコックフーズが使用していた商品の商標および商品がともに
シマナカの登録商標と同一または類似しているとピーコックが認めたことがわかります。
ちなみに、今回にニュースについて話すときには、
「商標権侵害は、商標と商品・役務の両方が同一または類似していないと認められないけど、
今回の件は、あきらかにどちらも類似してるよね」
というと、商標をわかってる感じがでると思います。
長くなりましたので、(2)商標法と不正競争防止法については、こちらをご覧ください。