2016年5月31日:日系企業の主張棄却、特許侵害訴訟[製造]

この記事の知ったかぶりポイントは
「特許侵害訴訟の中でも特許の有効性が争わる。」という点です。
中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本英彦が、
ポイントを絞ってわかりやすく解説します。

日系企業の主張棄却、特許侵害訴訟[製造](NNA.ASIA)
http://nna.jp/free/news/20160531krw009A.html

マッサージチェア関連の特許侵害について、
ファミリーイナダ(大阪市淀川区)ボディーフレンド(韓国)韓国で訴えていた事件です。
(韓国の特許法は日本の特許法によく似ているので、以下、日本の法律に基づいて説明します。)

特許侵害訴訟は、その名のとおり、被告製品原告特許侵害しているか否かが争われます。
しかし、特許が無効なら、特許が存在せず特許侵害も成立することがありませんので、
特許侵害訴訟の中でも特許の有効性(無効性)が争われます。

特許侵害で特許の有効性が争われるのは、当たり前のようにも感じるかもしれませんが、
基本的に特許の有効性は特許庁の特許無効審判で争われます。
なお、無効審判の後審決取り消し訴訟に発展することもあります。
(侵害訴訟と審決取り消し訴訟の関係については、こちらをご参照ください。)

今回の事件でも、侵害訴訟において、ファミリーイナダの特許は無効であると認められていますが、
その前段階で、韓国の特許庁にあたる特許審判院で特許無効の審決がでていたようです。
(無効審決はでていましたが、おそらく、審決は確定しておらず審決取り消し訴訟に発展していたと思われます。)

特許侵害訴訟を提起すると、ほとんどの場合、相手は無効審判を請求してきます。
すると、侵害訴訟と無効審判の両方で特許が有効と認められなければ、
侵害訴訟で勝てないことになります。
勝てる見込みがないというわけでは、もちろんありませんが、
訴訟対応に費やす労力、時間、費用は大変なものになると想像がつきます。

中小企業の知財戦略では、訴訟はあくまでも最後の手段にとっておき、
訴訟をチラつかせるなどして、相手を威圧して市場を守るのが基本戦略だと考えます。

本事件の詳細な解説は、知財関連ニュースの解説の「日系企業の主張棄却、特許侵害訴訟[製造]」をご参照ください。

この記事を書いた人

山本 英彦