以前の企業では、20件/年程度の出願をしていました。
特許を活用して中小企業の利益を守る、中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本です。
20件のうち、1割程度は特許事務所に依頼して、残り9割は自社出願でした。
自社出願のメリットは、主に、以下の3つだと考えます。
(1)費用
代理人(弁理士)に依頼すると出願だけで30万円~の費用が必要になると思いますが、
自社出願をすれば特許庁費用の1万5000円で済みます。
知財担当者の明細書を書く人件費を加見する必要があるので、
その分を考慮して比較しなければいけませんが、
キャッシュアウトだけなら自社出願の方が格段に安くなります。
中小企業にとって、キャッシュアウトを減らすことの意味は非常に大きいと思います。
(2)内容
自社出願する場合は、明細書を書く人は当然に社内の人になります。
よって、発明者と明細書を書く人は、毎日顔を合わせることも可能になります。
したがって、明細書を書く上での情報は質も量も格段に上がります。
明細の内容は、情報の質と量に影響を受ける部分も大きいので、
自社出願では、情報を上手く取捨選択できれば(慣れるまではこれが難しいですが)、
内容の濃い明細書の作成が可能になります。
(3)明細書への理解
自社出願すると、当然に、明細書への理解が進みます。
すると、代理人経由の出願をする場合でも、
代理人の作成した明細書のチェックに関して、
どこに注意すればよいかがわかるようになります。
特許に関する知財活動は、明細書に始まり、明細書に終わると思います。
(この辺りは、また別の記事に書きたいと思います。)
明細書への理解が進めば、知財活動のレベルは格段にあがると思います。
逆に、デメリットは以下の3つです。
(1)管理
代理人経由で出願すれば、出願審査請求、出願公開、優先権等の期間等が到来すると、
通常、代理人からお知らせがくると思います。
よって、代理人にお任せしておけば、出願を管理していなくても
重要な法定期間等を忘れてしまうようなことはありません。
自社出願をする場合、多数の出願を管理するシステムが必要になります。
しかし、管理体制を一度作ってしまえば、このデメリットは解消できると思います。
(2)時流への適応
明細書の記載は、判例、法改正等の環境の変化に適応させる必要があります。
これら環境の変化を常にチェックし続けることはなかなか難しいです。
しかし、全件を自社出願するのではなく、代理人経由での出願も何件か行い、
その過程で、弁理士の書く明細書を読んだり、弁理士から情報収集することで、
環境の変化への対応は図れると思います。
(3)時間不足
自社出願をする場合は、当然、社員が明細書を書くことになります。
しかし、明細書を書く作業は、結構な時間を必要としますので、
(明細書の内容にもよりますが、1週間~くらいの時間が必要になると思います。)
その時間の確保は、なかなか難しいです。
しかし、このデメリットも、
代理人経由の出願と自社出願のバランスをとることで解消できると思います。
以上のように、自社出願は、デメリットも多数ありますが、
やり方によってそれらデメリットは解消できるし、メリットも大きいです。
自社出願をすることで、企業の特許レベルは格段にあがります。
やり方さえわかれば、自社出願の制度導入もそれほど難しくありません。