お客さまから特許の相談を受けたときに、特許に対して誤解されていることがよくあります。
みなさんは、こんな誤解していませんか?
「特許を持っているから安心!」という誤解 |
特許を持っているからといって、自分が特許侵害にならないわけではありません。
特許は他人を特許侵害で訴えることができる権利(矛)であって、自分が特許侵害にならない権利(盾)ではありません。
たとえば、自転車屋さんのAさんは、とても握りやすいハンドルaを発明して自転車の特許を取得しました。
自転車屋さんのBさんは、とても座りやすいサドルbを発明して自転車の特許を取得しました。
自転車屋さんAさんは、ハンドルaとサドルbを使った自転車αを販売しました。
すると自転車屋さんBさんは、サドルbを使ったことに対して自転車屋さんAさんを訴えることができます。
自転車屋さんAさんは、ハンドルaの特許を持っているのに、侵害だと訴えられるわけです。
特許を持っている製品だからといって安心して販売はできません。
製品を安心して販売するためには、その製品が他人の特許を侵害しないか調査しなければなりません。
「国際特許取得」という誤解 |
特許は、国ごとに審査、登録がされます。
全世界で共通に通用する「国際特許」というものはありません。
特許(特許権)は特許法(法律)で定められた権利です。
日本には日本の特許法、アメリカにはアメリカの特許法、中国には中国の特許法といった具合に、
各国ごと特許法があります。だから、基本的に国ごと出願がされて、審査に合格すると特許権が発生します。
全ての国で通用する特許があれば便利なように感じますが、どの国が審査するのでしょうか?
A国で審査された特許がA国でもB国で通用すると、B国が不利になるようにA国の審査が簡単になったりしそうです。
やっぱり国ごとに審査と登録がされないと、不平等になってしまいます。
ところで、審査や登録は国ごとですが、出願だけは複数の国に一度に出せる制度があります。
それが「国際特許出願」です。審査と登録が別々でも出願はまとめてできた方が便利だし、
不平等にもならないよねという趣旨で、複数の国が参加する条約で定められています。
「他人が販売していなければ特許になる」という誤解 |
特許は販売などにより公知になった発明は特許になりません。
自分が公知にした発明も特許になりません。これを、発明が新規性を喪失したといいます。
自分の製品が売れたので、他人に真似される前に特許を取りたいと思うかもしれません。
しかし、残念ながら、自分が販売してしまうと公知になってしまっているので特許は取れません。
したがって、基本的には自分が販売するより先に特許出願をしなければ特許はとれません。
また、販売の他にも展示会発表や学会発表をすると公知になって新規性を喪失してしまいます。
所定の要件を満たすことで新規性喪失の例外という例外制度があります。
しかし、所定の要件を満たすのが難しいことや、所定の要件を立証するのも難しいことからあまりお勧めできません。
基本は、公知にするまえに特許出願をしましょう。
「特許を取れば儲かる」という誤解 |
特許をとっても儲かるとは限りません。
売れる商品に特許をとって、利益を守る(競争を生まない)ことが大切です。
この誤解が生じるのは、メディアが、よく売れた商品に特許があると商品の説明に特許の話を盛り込むからでしょうか。
商品の売上と特許はほとんど関係がありません。(少し関係が生まれることはあります。)
特許をとっていなくてもよく売れる商品はありますし、特許をとっていても売れない商品のたくさんあります。
特許を取得する一番の目的は、売れる製品を自分が独占することです。
よく売れる製品ほど、類似品を作って手軽に儲けようとする他人が現れやすくなります。
類似品が現れると価格競争になり、価格競争は企業を疲弊させます。
特許を上手く活用できれば、類似品が売られることを防いで、価格競争をすることなく利益を守ることができます。
売れる製品を考えつくのは実際に事業をしている人だけです。
売れる製品を考えるときに、一緒に特許取得も考えてみてください。
「うちは特許になるような技術はない」という誤解 |
発明が新しくて(新規性)凄い(進歩性)ことが特許になる条件です。
何かの分野に特化した技術や製品には、新しくて凄い発明が隠れている場合が多くあります。
あなたの開発したものは、従来のお困りごとを解決する画期的な製品・サービスではありませんか?
画期的で新しいからこそ、商品・サービスが売れると思い開発をしたのだと思います。
特許になるような技術はないと決めつけると、隠れている発明を見つけることができません。
あなただから開発できた商品・サービスですから、特許を取って利益を守ることがって欲しいと思います。
ただ、発明を見つけたけど、費用との兼ね合いから特許出願をしないことは、適切な経営戦略だと考えます。
まずは、発明を見つけて見ましょう。その上で、経営に役立つかを判断基準に特許取得を考えてください。
売れる製品を新しく作ったときは特許になる技術が開発されています。
売れる製品を特許で守って利益率の高い経営を目指しましょう。
利益率の高い製品は経営者も従業員も幸せにするはずです。
上記のような誤解があると、特許取得、特許活用の方針を間違えてしまいます。
IPUSE特許事務所では、ご相談・ご依頼を受けた際に、特許制度や料金についての説明を徹底し、
お客様が誤解を持ったまま、間違った特許活用に進まないように細心の注意を払っております。
特許について誤解していたと思い当たる節のある方は、一度お問い合わせください。
正しい特許活用に向けてアドバイス・サポートさせていただきます。