この記事の知ったかぶりポイントは
「特許群のクロスライセンスは大手の知財戦略」という点です。
中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本英彦が、
ポイントを絞ってわかりやすく解説します。
シャオミ、マイクロソフトから1500件の特許を取得 (WirelessWire News)
https://wirelesswire.jp/2016/06/53628/
中国の大手家電メーカーのシャオミ(Xiaomi)がマイクロソフト(Microsoft)から約1500件の特許を買い取ることで両者が合意したようです。
シャオミは、スマートフォンの販売で世界第3位だそうで、マイクロソフトも一時はスマートフォンに参入していました。
スマートフォン等に代表されるハイテク製品は、1つの製品に数十万件の特許が利用されています。
もちろん、1社が特許を独占しているわけでなく、複数の大企業が数百~数万件の特許群を保有し、それら特許群を企業間で利用し合う(交換する)契約により、特許群を持ち合う企業は相互に特許侵害訴訟を起こさないようにしています。これを特許群のクロスライセンスといいます。
この特許群のクロスライセンスにより、特許群を保有している複数の企業で独占的な市場が形成されます。そして、特許群を保有していない企業は、交換する特許群がないので、市場に入ることができません。どうしても市場に入りたければ高額のライセンス料を市場を先に形成した複数の企業に支払うことになります。
シャオミンは、これまでは必要な特許群を保有しておらず、ヨーロッパやアメリカへの海外進出の障壁となっていたそうです。そこで、今回マイクロソフトからマイクロソフトから特許群を購入し、特許群のクロスライセンスの準備をしているわけです。特許群を保有し、先に市場を形成していたマイクロソフトとしては、ショバ代をシャオミに払わせたようなものです。
スマートフォンに限らず、この特許群のクロスライセンスという特許戦略はエレクトロニクス製品での常套手段になっています。
しかし、数百~数千の特許を取得・保有するのにどれだけの費用が掛かるでしょうか?
もちろん、世界中のスマートフォンの販売売り上げを考慮すると、元はとれるのでしょうが、
特許に莫大な先行投資のできる企業でなければ、できない戦略、すなわち、特許群のクロスライセンスは大手企業の戦略です。
中小企業は、同じ戦略をとれませんし、とる必要もありません。
中小企業は、ニッチトップを目指し、基本的にはクロスライセンスやライセンスは狙わず、大手企業が無理やり入ってこない程度の大きさの市場で、他の中小企業が入ってこれない必要最小限の特許を取得するというのが、中小企業の特許戦略の王道だと考えます。