特許公報の読み方~その3~

特許を専門にしない方には難解とされる特許公報、その読み方を順を追って解説していきます。
特許を活用して中小企業の利益を守る、中小企業専門の特許活用サポータ 弁理士の山本です。

前回は、図面の符号に各部の名称を記入することを説明しました。
(特許公報の読み方~その2~を参照)
今回は、公報を読んでいく順番について説明します。

読む順番といっても、基本的には、自分の読みやすい順で読めばいいのですが、
それだと自分で順番を確立するまでに時間がかかりますので、私の読む順を紹介したいと思います。

大きい括りでは以下の順に読みます。
(1)書誌的事項
(2)図面
(3)特許請求の範囲(1回目)
(4)発明の詳細な説明(【発明を実施するための形態】の前まで)
(5)特許請求の範囲(2回目)
(6)発明の詳細な説明(【発明を実施するための形態】以降)
(7)特許請求の範囲(3回目)

(1)書誌的事項
読むのに苦労することはないと思います。
公報を読む目的によりますが、出願日、優先日、出願人はチェックしておきます。
要約の部分は、特許請求の範囲の【請求項1】のコピペの場合が多いので、基本的には読みません

ところで、審査請求が「未請求」となっている場合がありますが、
これは、公報発行時(出願から1年6ヵ月)に「未請求」なだけで、
その後、請求されていることもありますので、審査請求の有無は別途確認が必要です。

(2)図面
読むというか、眺めるという感じです。
明細書の【図面の簡単な説明】の欄を見ながら各図面を眺めます。
多くの場合、図面の順番どおりに眺めると明細書全体のストーリが想像できます。
符号に各部の名称が記入されているので、ストーリを想像する助けになります。

機械系の明細書の場合、明細書のできが良ければ、図面を眺めた段階で、
発明の内容が想像できる場合もあります。

(3)特許請求の範囲
公報の中で最も読みにくく、しかし最も重要な部分です。
詳細な読み方は次回以降に説明しますが、1回目のときは、
発明を理解したり、権利範囲を考えようとするよりも、図面との関係を理解することに注力します。

図面に記入した各部の名称と、特許請求の範囲の文言(構成)は一致するはずなので、
特許請求の範囲の文言を読みながら、図面を追いかけていきます
特許請求の範囲の文言が各部の名称として記載されている数の少ない図面は、
あまり重要ではない場合が多いです。

(4)発明の詳細な説明(【発明を実施するための形態】の前まで)
【技術分野】【背景技術】【先行技術文献】【特許文献】【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】【課題を解決するための手段】【発明の効果】【図面の簡単な説明】の順で記載されています。
基本的には、この順番で読めばよいと思います。

【技術分野】【背景技術】は、流す程度に読みます。難しいことが書いてあっても気にしません。

【先行技術文献】【特許文献】は、準備するのに手間がかかるので、
よほど必要と思うことがない限り準備はしません。

【発明の概要】【発明が解決しようとする課題】は、重要部分です。
内容が理解できるまで繰り返し読みます。
ただし、3回読み返して、内容が理解できないときは、
明細書が上手く書かれていない場合が多いので、あきらめて、次に進みます。

【課題を解決するための手段】は、
【特許請求の範囲】のコピペの場合が多いので基本的に読みません
先に読んだ【特許請求の範囲】で書かれていたことを思い出しながら次に進みます。

【発明の効果】は、
【発明が解決しようとする課題】の内容が裏返しの意味で書かれていることが多いです。
【発明が解決しようとする課題】の内容が理解できていれば、すんなり読めると思います。

【図面の簡単な説明】は、図面を見るときにすでに見ているはずです。
実施例が複数ある場合は、ここでわかると思います。

長くなったので、次回(「特許公報の読み方~その4~」)に続きます。

この記事を書いた人

山本 英彦